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今年度中学卒業を迎える利用者S君との出会いは10年前、S君がまだ5歳の時でした。産まれた時から脳に重度の障害があるS君は目が見えないのと、四肢の麻痺、知的障害があります。「立とう」「座ろう」などの簡単な言葉は理解していますが、発語はほとんどありません。数年前までは「ママ」や「パパ」ジェスチャーで「バイバイ」をしていましたが、ここ数年はそれも見られません。

そんなS君は先日支援学校で行われる演劇に出ました。毎年その劇が開催されているのを私は知っていましたが、S君が出ている場面を見たことはありませんでした。今日たまたまリハビリをするために家を訪れるとお母さんが劇のビデオを見ており、「リハビリしながら見ますか?」と声をかけていただき、今日のリハビリは劇を見ながら行いました。

劇にはS君と同様に身体的、知的に障害を持った子たちが『ドリー』の劇をしている姿がありました。演劇は10分程度のもので、出演者4人のセリフは先生が読み、介助歩行で劇場を歩いたり、歩くのが難しい子は車いすを押してもらい、ひもを引っ張り、ボールを箱に入れたり、障害がある中で、それぞれの演者にできることを精一杯表現していました。それは、同時に先生方が『子供たちができることを精一杯表現させてあげたい』『子供たちが表現している姿を家族に見て欲しい』という想いの結晶のように感じました。

学校は『勉強の場』『社会性を築く場』等子供たちの成長には欠かせない場所です。しかし、今回見た劇場での姿は子供たちにとっての社会参加の場であることはもちろんですが、その家族にとって子供たちが『何かを成し遂げている姿を見れる貴重な場面』だと思います。ビデオを撮っているお母さんはきっと幸せな顔をしていたはずです。

私たち療法士が簡単には表現できないことをされている教員の先生方を素晴らしいと思うのと同時に、自分にこの先何ができるのかを考えさせられる訪問でした。療法士が『ADL』や日常の『活動と参加』にアプローチすることは当然です。加えて、本人や家族が日常では味わえない幸せを提供できるようなこともしてみたいものです。そんな療法士になれたら幸せですよね。

 

今日はそんなビデオを一緒に見ていたからなのか、S君はここ数年で一番調子よく歩くことができました。今日の出来事をブログに書くことを了承いただいたお母さん。ありがとうございます。